なんとか必死に医務室のベッドに引き上げ、尊を寝かせる。
力を使い果たしたのか、尻尾も獣耳も出た妖狐の姿に戻っている尊。



目を、覚ますのだろうか。
目を覚ました時、どうなるんだろう。


不安がないわけじゃない。



偉そうなことを言ったけど、私に尊を止める力はないことは何度も経験した。
私が傷つくのは、自分が選んだ道なのだから自業自得だけれど。
それを知った尊の心が傷つく方が心配だ。


寝ぼけて私を襲った後、自分を責めて寒空のテラスに自分の腕を拘束してまで私を護ろうとした尊。




「でも・・・、記憶が戻ったのなら、その尊はもういないのかな・・・」




どんな記憶なのだろう。
人間を憎むような過去。


きっと私にはわからない痛みや悲しみがあったんだろう。
誰か個人ではない、人間そのものを恨み憎しむ程の事。



白銀は神使だと言っていた。
ならば尊はなんなのだろう。



罪を犯したといっていた。
どんな罪だろう。



ああ、本当に。
私は尊のことを何も知らない。