やっぱりお母さんはお母さんなんだよ、それがどんなときであっても。
まあでも、ここからは家族水入らずということで、2人にしておいた方がいいかな。
携帯電話のふちに座る彼に微笑み、私は部屋を出ようとする。
すると、私に気付いた三枝くんが猛スピードで駆け寄ってきて、ズボンのすそをぎゅっと引っ張った。
首を横に振る仕草は、まるで『行かないで』と言っている子犬のようで、ついさっきの場所に引き返してしまった。
けれど、本当にこれでいいのだろうか。
部外者である私が、他人の家庭事情に突っ込むなんてこと。
しかも私の携帯電話はスピーカー状態。
まあだからさっきのお母さんらしき人の台詞も聞こえたんだけど。
でもいくら聞こえやすい方がいいからって、そんなプライベートな会話は秘密にしておいた方がいいのでは。