誰かに相談出来るはずもなく、1人ショックを受けている。


可哀想だな、と憐れみの眼を向けていると、携帯電話から女の人の声が聞こえてきた。


『はい、もしもし』


どうやら自宅にかけたらしく、声の主はよく分からないという様子で、知らない番号に不信感を抱いている。


「…もしもし、母さん」


『えっ……紘、なの?』


「そうだよ、久しぶり」


『どうして帰って来ないのよ、ずっと心配してたんだから!』


涙まじりに息子を叱る、母親らしい声色。


───紘のことなんか、まるでどうでもよくなったかのように冷たくなって、口を開けば『聖』、『聖』って。


逢坂くんはあんなこと言っていたけれど、本当はずっと心配してくれていたんだ。