「三枝くん…行こう?」
「………」
「………あ、えっと」
「…じゃあ電話だけ」
短い沈黙の後、つぶやくように声に出した。
本当は直接面と向かって話したほうがいいのだろうけれど、『電話』という答えを出しただけでもかなり大きな一歩になったと思う。
その決断は、きっとこれからの三枝くんの力になる。
何の根拠もないけれど、しかめっ面の彼の顔を覗き込んで、にこやかに笑った。
プルルルル…
家に入り、自室で携帯電話の音を鳴らす。
小刻みに震えながら相手を待つのは、彼の携帯電話ではなく、なぜか私のもの。
実は三枝くんの携帯電話は体と共に小さくなっていて、使えなくなったというわけではないが、従来の充電器にさすことの出来ないまま、プツッと反応しなくなってしまったという。
つまり、電源切れだ。