家の前に着いた。
けれど私は、扉の方へ向かうことなく、再び足を止める。
別に歩けなくなるほど何かに思い詰めていたわけではない。
ただ1つ、あることを思い出したから。
「…ねぇ、三枝くん」
「ん?」
「三枝くんの家ってどっち?」
「はあ!?」
急に何を言い出すんだ、とでも言いたげな表情でこっちを見上げる。
「そんなもん知って何になる!? 行きたい理由でもあるってんのか!?」
家の話になると、急激に焦り始めた三枝くん。
きっと、家族に会われるのを恐れているのだろう。
…でも、いつまでも逃げていちゃ、何も変わらないんだ。