「これからも、ずっと2人でお互いに支え合っていこうと思っていた矢先、母親は新しい父親といつの間にか籍を入れていたらしい。何の相談もなかったことに、1人辛く思っていたときに、生まれた弟が聖だ」


もしかしたらあのときの、


『幸せな家庭に生まれてきた鳴海には分かんねぇよ』


の意味はこのことだったのだろうか。


決して裕福なわけでも、特別幸せだというわけでもない、いたって普通な私の家族を羨ましがっていたのは、きっと辛い過去があったからなのかもしれない。


「紘は、よっぽど聖を嫌っていたよ。毎日毎日ちやほやされまくって、父親も母親でさえこいつに取られてしまったんだから」


「お母さんも…!?」


「ああ。紘のことなんか、まるでどうでもよくなったかのように冷たくなって、口を開けば『聖』、『聖』って。悲しかっただろうな、唯一の家族だったのに」


「ひどい…」


気付けばそう声に出ていた。