そしてお昼のチャイムが鳴るなり、逢坂くんは約束通り私の席に来た。


あまりにも時間通りだったために、少しばかり焦ってしまう。


てっきりここで食べるのかと思ってお弁当を用意してわくわくして待っていた私だけど、彼は私を別の部屋に誘導した。


着いた先は、旧校舎近くの小さな部屋の並びの一角。


『男子テニス部 部室』と書かれた、少し汗臭い部屋だった。


どうしてここに連れてきたのだろうと首をかしげると、にこりと笑って答えた。


「あの教室だと、人目を気にするだろ? 前に紘と食べていたとき、そんな感じの理由で逃げ出したのを見ていたから」


俺の前では気を使って欲しくないし、なるべく素のままでいて欲しいから。


照れたように顔を少しばかり赤くする逢坂くん。


誰も見ていないようで、ちゃんと私のことを見てくれている人がいた。


心がじんわりと暖かくなっていく気がして、つい笑顔になる。