教室に入り、誰にも挨拶されないままいつも通りの席に着く。


『おはよう』の言葉さえかけてもらえない私に、三枝くんは不思議がっていたようだが、私はそれが普通なので、苦笑いで返す。


すると、そんな話をしていたとき。


「おはよう、鳴海」


朝から私に声をかけるだなんて珍しい人だな、と思いながら、聞き覚えのあるその声に振り返った。


「…あ、逢坂くん」


同じように挨拶を返すと、よう、と一言笑ってくれた。


「どうしたの、私に何か用?」


もしかしたら用があるわけでもなくただ話してくれようとしていただけなのかもしれないのに、いらない一言のせいで、私はまた友だちになってくれるかもしれない人を失っていくのだろう。