「遅刻するかと思って」


時計を指差して、三枝くんは言った。


遅刻って…まだ5時なんだけど。


「起こしてくれたのはありがたいけど、こんなに早くじゃなくても大丈夫だよ」


「そっそうか、悪い。女子ってメイクとか髪に気を使うイメージがあるから、鳴海もそうなんじゃないかと思って…」


「もしかして、私のために気を配ってくれたの? そうとは気付かず、ごめんね」


「いいいや、何も知らなかった俺が悪いんだ。これからは気をつけるようにする。何せ、あと十数日もお世話になるんだからな!」


十数日…まだそんなにあったとは。


だけど、今はこの関係が少し楽しく思える。


深く関わってからまだ数日しか経っていないのに、不思議だな。


小さく笑う三枝くんに、おぼろげな笑顔を返した。