「それだけだから、じゃあな。鳴海もわざわざ引き止めちゃって悪かった」
「ううん、私は別に…」
じゃあ、と今度こそ別れる。
三枝くんの曇った表情は、未だ戻らないまま。
どうしたんだろう。
昼間はあんなに楽しそうにしていたのに。
不思議に思いながらも、とりあえず家に入る。
「ただいま」
声に出すだけで返ってくる言葉。
「あら、おかえり」
「遅かったじゃないか、心配したんだぞ」
心配って、まだ5時だよ。
高校生なんだから、このくらい普通だって。
と、心配性な両親に笑みをこぼしながら、私はまた嘘をつく。