「あ…着いたから、もうここで大丈夫だよ。送ってくれてありがとね」
家の前で、私は逢坂くんに声をかけた。
「うん、じゃあここで。おい、紘! くれぐれも鳴海に変なことすんじゃねーぞ!?」
「分かってるよ、うるせーな!」
またね、と手を振り、扉の方へと向かっていると、逢坂くんは何かを思い出したかのように戻ってきた。
「紘。そういえば、家族にはこうなったこと連絡したのか?」
私の胸ポケットにいる三枝くんを見て話す。
「……いや、まだだけど」
「どうせお前のことだから、また聖(セイ)がー、とか言ってたんだろ? ちゃんと話しておけよ? 紘のことめっちゃ心配してたんだから」
「ああ、分かった」
聖…。
逢坂くんがそれを口にした瞬間、三枝くんの表情がわずかに曇ったように見えた。