「ああ、そういうことね」
微笑ましそうにふふっと笑って、中へ入れてくれた。
「待っててね、今呼んでくるから」
お父さーん、という掛け声とともに、なんともほのぼのとした可愛らしい空間が広がる。
私もいつかは、あんな風に呼べる相手が出来るのかな。
例えば、三枝くんとか……なんて、自分で始めた妄想に勝手に恥ずかしくなる私。
1人でにやけて、1人で赤面して。
本当、私どうしちゃったんだろう。
三枝くんと関わり合う前は妄想なんて全くしなかったのに…。
「はあ…」
つい口からこぼれ落ちてしまったため息に、何も知らない三枝くんは心配そうな目を向ける。
「どうした、鳴海? 具合でも悪いのか?」
「えっ!? あ、ううん…何でもない」
「ならいいけど。悩みとかあるならちゃんと言えよな? こんな小さくなっちまった俺だけど、話くらいは聞いてあげられるからさ」
「…うん、ありがとう」
本当、なんて優しいんだろう。
三枝くんがこんなにも善の心で溢れている人だなんて、思いもしなかった。
いや、本当は私が逃げていたのかもしれない。
良い人だからこそ、私に関わってほしくなかったのだから。