「本当ありがとう」


「えっ……あ、おう」


照れる君に、私は手を握り返す。


より強く感じる暖かさに、心が優しくなっていく気がした。


「…それも嬉しいけど、本当は感謝より返事がほしいんだけどな」


私に聞こえるように、それでいて、そっぽを向きながら呟く。


「好きだよ、三枝くんのことは。ううん。好きじゃ足りないくらい、大切な人」


これだけは、不思議と緊張せずに伝えることが出来た。


口下手で、上手く思いを伝えられない私が。


「うん、ありがと」


すると三枝くんは、もう片方の手で顔を覆ってしまった。


これじゃあ、表情が見えやしない。


でも、私は気付いている……耳や喉まで赤く染まっていることに。


喉って珍しいな、と思いながら私たちは家に着く。