「分かった、ありがとう」


「おう」


途端に嬉しくなって、また顔を赤くする三枝くん。


それでも、手は離さないまま。


不器用で優しい、三枝くんらしい愛が、なんだか愛おしく感じる。


「あ、駅着いたみたい」


行こう、と声をかけると、三枝くんは残念そうに立ち上がる。


「1日が終わることに、こんなにも悔やんだのは初めてだ」


ホームを過ぎた頃、三枝くんはぽつりと口にする。


「どうして?」


「だって、今日からはまた鳴海と離れ離れになる。あのドールハウスで過ごしたことが懐かしく感じるよ」


離れ離れ、って。


大げさだなぁ、と思わず笑ってしまう。