「鳴海、帰ろっか」
手を繋いだ先に、その笑顔が待っている。
私の存在を必要としてくれている。
それだけでもう、十分満足だ。
「うん、三枝くん」
遊園地を後にし、私たちは電車に揺られていた。
「外、暗いな」
隣の席に座る三枝くんは、窓越しの景色を眺めて呟いた。
「そうだね、もう日も落ちてる…」
「今日、送っていくよ。1人じゃ、危ないし」
膝の手を握り、三枝くんは微笑む。
「ううん、大丈夫。1人で帰れるよ」
「だめ。俺が心配なんだよ、送らせて!」
むっと口を膨らませ、だだをこねた子供のようにわがままになる。
こういう一面があるから3センチだった頃を思い出すのに、三枝くんは気付いていないのかな。