「このゴンドラを降りたら、俺の願いは記憶から消える」


悲しげに瞳を下げる彼。


そっか、忘れてしまうんだ。


三枝くんが私のために小さくなったことも、その幸せを願ってくれたことも。


「大丈夫。三枝くんに出会えたことが、私の幸せだから」


忘れても、心の中にはちゃんと残っているはずだから。


心配はいらないよ。


そう微笑んで見せると、彼は顔を赤く染める。


「そんなこと言わないで……また、キスしたくなる」


「えっ?」


もしかして独り言だったのか、上手く言葉が聞き取れない。


何、と聞き返すと、三枝くんは私の後頭部を寄せ、また耳で囁く。


「でも、これだけは忘れないで………俺は、鳴海が好きだ」


「……っ!」


言い終わると、三枝くんはさっと離れて今度は手を握る。