「──あ、もうすぐ観覧車が地上に着く」
「うん…」
また何分かが経ち、三枝くんは体を離す。
ぬくもりが消えたことにうっすらと寂しさを感じている私は、鞄からハンカチを取り出して涙のあとを拭いた。
こんな時でもメイクをしていなかったことだけが、唯一の救い。
目のまわりが赤くなるだけですんで良かった。
けれど、三枝くんはどうして私の幸せなんか…。
ゴンドラを降りる準備が出来た私は、荷物を手に三枝くんに向き合った。
短いようで長かったこの場所ともお別れだと思うと、なんだか寂しい気分。
「あのさ、降りる前に最後に一つ言ってもいいか?」
「えっ?」
急に改まったことを言うので、私は首を傾げる。
まだ何かあるのだろうか。