「そうだよ、紘くんのことが好きだった」


優しくも切ないその笑みに、気付けば俺は、ゆっくりと沈んでいった。


「なんで…だって、付き合っていたのは家族だったからだってさっき言って…」


「うん、最初はそうだった」


「最初は?」


ということは、今は違うということで。


「なんかね…会うたびに、話すたびに、どんどん紘くんに惹かれてさ。気付けば、心から好きだと思えて。ずっとそばにいたいって思った。家族としてじゃなく、彼女として」


「香澄…」


顔を赤く染めて、恥ずかしそうに話してくれた。


その表情は、本当に可愛くて、つい見惚れてしまう。


…でも、『好き』とは何かが違うんだ。


鳴海に対する思いと香澄への思いが、似ているけど確かに違っていたと、なぜか確信出来る自分がいて。


不思議と、それだけは正しいような気がしていた。