きっと香澄だって、その程度だったんだ。


別に俺のことなんか好きでも何でもない。


ただ、兄妹だったから近付いただけ。


それ以上でも、それ以下でもないんだ。


そうやって自分自身に言い聞かせないと何もやっていけないような俺が、一番悔しくて。


ただ黙って、時間が過ぎ去るのを待っていた。










「──くん、紘くん」


「はっ……!」


香澄の声が聞こえ、我に帰る。


「本当に大丈夫?」


「あ、ああ…もう大丈夫」


そうだった、ここは家。


あのときの部室じゃない。


そんな現実に、なぜかほっとした俺は、香澄の顔をまじまじと見つめた。


「えっ、ちょっと! そんなに見ないでよ、恥ずかしいってば」


言いながら顔を覆おうとするが、その手は今俺が使っているから、どうすることも出来ずにとりあえず必死に顔を背けようとする香澄。


その姿がなんだか可笑しくて、俺はぷっと吹き出した。