香澄は、俺が血の繋がった兄弟だと知っていたんだ。


だからわざわざ同じ高校へ入ってきた。


そして、俺を見つけるなり、仲良くなって、恋人になった。


そのように、香澄は話してくれた。


なんだよ…。


じゃあ、今までの思い出も、笑顔も、全て嘘だったっていうのかよ…。


悔しくて、切なくて、なんだかもどかしい。


気付けば俺は、また口を開いて。


「ごめん、もう別れよう」


涙をにじませた目を伏せ、思いのままに声に乗せた。


香澄がどう思うかも、どう感じるかも知らずに。


「うん、そうだね」


だけど、俺の思いとは裏腹に、香澄はすぐに答えを出した。


しかも肯定の形で。


自分から言っておいて、こう思うのもどうかと思うかもしれないが、正直止めてくれるのかと思っていた。


嫌だとか、どうしてとか。


でも今さら引き止めるなんてことは、格好悪いというくだらないプライドに勝てることなく、小さくなって消えた。