でも、これは彼自身の問題だから。


私が突っ込むものじゃないんだ。


鈴村さんが、私の手のひらに右手をゆっくり重ねる。


そして、優しく大切に、体を包み込んで、受け取った。


「ありがとう、2人とも」


彼女は、笑顔でそう言うと、三枝くんとともに扉の奥へと消えていった。


「さて、じゃあ紘も置いてきたことだし、俺たちも行くか」


マンションの階段を降りながら、逢坂くんは私に声をかけた。


「えっ、今のが目的じゃなかったの?」


てっきり、三枝くんをもう一度話し合いさせることが、逢坂くんのお出かけの意味だと思っていたけれど、違うのだろうか。


「今のは、また別。紘の問題を解決したいっていうのもあるけど、一番はこっそり鳴海のポケットとかに忍び込んでいたりしたら嫌だったからな」


「そう、だったんだ」


ということは、やっぱり2人きりでいたいってことだよね。


何か重い話でもされるのかな。


緊張で固まった体を、どうにかしてほぐそうと考えながら、私は逢坂くんの隣を歩いていた。