「なんで、ここに…?」
「さ、行くぞ」
いまいち理解していない私たちは、ただ階段を駆け上がる逢坂くんを止めるなんて出来るはずもなく、苦い顔でついていくのだった。
「お、おい! ちょっと待てよ! どういうことか、ちゃんと説明しろって、小春!」
必死に訴える三枝くんに、逢坂くんはやっと話してくれた。
「…紘。お前、本当にあれでいいと思ってんのか?」
「はあ? あれって何だよ」
「親御さんとのこと、香澄とのこと。一方的に思いを伝えるだけじゃ、何も解決しないだろ」
振り返った逢坂くんの瞳は、黒く澄んでいて、私まで飲み込まれそうになる。
だけどその分、彼の真剣さがより鮮明に伝わってくるのだった。