反射的に、今身につけている制服のポケットに 手を入れるが、当然あるはずもない。


貰ったのは昨日だから、昨日の服のポケットにあるのだった。


クローゼットを開けて、昨日の上着を見つけた私は、紙を探した。


右のポケットに手を入れれば、かさっと小さな音がする。


取り出してみると、電話番号とメールアドレスの描かれたメモ用紙があった。


「良かった…」


安堵の声を漏らし、紙の内容を写すように連絡先を登録した。


『逢坂 小春』


新しい名前があることに、つい顔がにやける。


家族、と言っても両親しかいなかったこのアドレス帳に、違う名字が入っているというだけで嬉しくなるのだ。