「ペットと話しているみたいで楽しかったよ、じゃあまた」
それだけを伝え、すぐに去っていく鈴村さん。
結局どんな話をしたのかは教えてくれなかったな…。
きっと家族のことなんだろうけど、やっぱり気になる。
私は、手のひらの中で包み込まれながら眠る三枝くんに視線を落とした。
小さな体を目一杯使ってあくびをしている。
こんなときでも、君はいつもの君なんだね。
そう思うと同時に、ある言葉が頭をよぎる。
『こんな日だからこそ、いつも通りでいたいだけだから』
もしかして、三枝くんの言っていた"こんな日"に今日も入るのかな。
いつも通り……そんな日常はちゃんと彼に訪れるだろうか。
『一寸成就』が終わったとき、彼のそばにいてくれる人はどのくらいいるのだろうか。
こっちを見上げる三枝くんに目を合わせ、ゆっくりと微笑みを重ねた。