「大丈夫かな、上手く話せているかな」
テニス部部室を後にした私たちは、教室まで歩きながら話していた。
「ああ、きっと紘なら大丈夫さ」
心配で震えていた体を、背中をさすって和らげてくれる逢坂くん。
私がさっき三枝くんにしたのと同じ行為に、胸が熱くなる。
三枝くんにも、私の思いが届いているといいな。
数十分が経ち、鈴村さんが三枝くんを連れて帰ってきた。
胸ポケットから、もぞもぞとしたしわの動きが見える。
やっぱり誰のところにいても、三枝くんはそこが落ち着くんだね。
こんなときでさえ、自然と和んでしまう。
「はい、紘くん借りちゃってありがとう。もう大丈夫だから、返すね」
借りるとか、返すとか。
三枝くんはまるで人形のようだ。
3センチサイズの彼を受け取りながら、私は小さく笑う。