どうしても、『一寸成就』の願い事に関する言葉は消えている。
単に忘れてしまっているだけなのか、それとも何か意味があるのか。
悩んでいると、逢坂くんはそんな私の様子を見て、うんうんと頷く。
「もしかして思い出せないんだろ? 俺もなんだ。まるでそこだけの記憶がすっぽりと抜けてしまったように」
私だけじゃないんだ。
そう思うと、なぜか嬉しくなる。
「だからその日の夜、じいちゃんに聞いてみたんだけど…」
「けど?」
一瞬の静寂が、私たちを包み込んで離さない。
ゴクリと息を飲み込むと、逢坂くんはゆっくりと口を開いた。
「じいちゃんも覚えてないらしいんだ。それだけじゃない。母さんだって、分からないって言うんだ」