「なんなら、俺が勉強教えてあげようか?」
「えっ、でも…」
私は言葉を詰まらせた。
確かに勉強を教えてくれるのはありがたいけれど、三枝くんの精神はきっと今までで一番最悪な状態にあるはず。
だから今日は、私のことなんかに構わず、ゆっくりしていてほしいのに。
そんなことを考えながら彼を見ていると、切なそうに小さく笑った。
「俺のことなら気にすんなって。鳴海のように、こんな日だからこそ、いつも通りでいたいだけだから」
「三枝くん…」
「さて、始めるぞ」
じゃあまずは、と場所をワークの上まで移動し、じっくりと問題を観察する三枝くん。
『こんな日だからこそ、いつも通りでいたい』
前向きな彼の言葉に、私の胸は少し和らぐ。
三枝くんらしいなぁ。
ぽつりとつぶやきながら、小さな背中を横目に微笑んだ。