何問か解いていた頃、ドールハウスの方から小さい声が聞こえた。


「…なあ、こんな日でもよく勉強なんか出来るよな」


「えっ、そうかな」


三枝くんの声に反応して、つい何も考えずに答えてしまったけれど、彼はいつの間に目を覚ましたのだろう。


振り返ると、ドールハウスから出て、こっちへと足を運ばせる三枝くんの姿があった。


もしかして机に上りたいのかな、と思い、そっと手を差し伸べると、彼はすぐさまそこに飛び乗る。


机に下ろすと、ありがと、とまた短い感謝。


何気ないその言葉さえ、いつもより少しだけ曇っていたように感じるのは、私の気のせいかな。


「へえ、数学やってんのか」


「そう。明日提出なんだけど、まだ終わってなくて」


「ふーん」


彼はとことこ歩いて、シャーペンを持つ右手の近くで止まった。


なんだか恥ずかしくて、つい動きが止まる。