「うん、ありがとう」


手を振って、逢坂くんと別れる。


逢坂くんは本当に優しい人だ。


良い友だちを持ったね、三枝くん。


胸ポケットの中の君へ、私は和やかに微笑む。


「ただいま」


ガチャ、という扉の開く音を鳴らし、私は家に入る。


そこには当たり前の空間が存在していた。


「おかえり、結子」


いつも通りの挨拶も、今日は聞こえ方が違う。


さっきのことがあったからか、もしかしたら2人も私の本当の親じゃないのかな、って心のどこかでつい疑ってしまうんだ。


「今日の夕食はハンバーグよ。結子の大好物!」


「覚えていてくれたんだ」


「当たり前じゃない、お母さんなんだから!」


「うん、そうだよね」