「じゃあ、もう1人は…?」


「あなたの本当のお母さんのところにいるわ。何度か連絡を取り合っているから、今の様子も聞いてる。紘と同じ学校の可愛らしい女の子だそうよ」


「俺と同じ学校…」


小さく呟いて、苦しい思いで口を開く。


だが、その口から声を発せられることはなかった。


『名前は?』


きっとそう尋ねようとしたのだろう。


でも怖いんだ。


真実を知りたくないから、今までの関係が壊れたくないから。


ならいっそ、他人のままでいたい。


そんな葛藤で悩み苦しんでいるのかもしれない。


本当はこんなことを聞きに来たわけじゃないのに。