「…あの人?」
三枝くんの素朴な質問に、母親は顔を濁らせる。
おそらく、最後の文は独り言のつもりだったのだろう。
「もう、言わなくちゃいけない時期が来たのね…」
母親は、涙を拭いて、深く呼吸をした。
そして三枝くんに向き合って、言葉を綴る。
「紘…あなたは、私の本当の子供じゃないの」
「えっ」
あまりにも衝撃的すぎる言葉に、私たちは何も言えなかった。
本当の子供じゃない。
そんなことを口にされるなんて思ってもみなかったのだろう。
こぼれ落ちた涙は、いつの間にか枯れていたのだから。
「今、なんて…」
「……紘は、実は死んだお父さんの連れ子だったのよ」