クラスメートと遊園地。
こんな私にとって夢のような出来事が、未だに信じられない。
ひとりぼっちの私にでも、いかにも青春といった体験が出来るなんて。
きらきらとした逢坂くんの笑顔を横目に、私は静かに微笑んだ。
そして観覧車も終わりに近付いたころ、三枝くんが窓枠に乗り、ぽつりとつぶやく。
「…この遊園地は、母さんとの最後の思い出なんだ」
「えっ」
その一言で、私たちの視線はオレンジ色の夕日に照らされた三枝くんの方へ向かう。
「小学生の時…まだ俺らの家族が2人だけだった頃、遊園地に連れてきてもらってさ。母さんも、『ここは私とお父さんの初デートの場所なの』って、嬉しそうに話してくれて。父さんはどんな人だったのかな、ってずっと考えてた」
「………」
「あの頃が一番楽しかった。素直に笑えて、何でも話せてさ……母さんは、俺の何が嫌だったのかな」