「着いたよ」
三枝くんがほら、と目の前の真っ黒い建物を指差す。
『呪いの館』とおどろおどろしい血のような真っ赤な色で書かれたその場所は、いかにもお化け屋敷といった感じのところだった。
大丈夫そうだと思っていた私でも、思わず後ずさりしてしまうほど。
私がこうなら逢坂くんはどうなっているのだろう、とふと隣を見れば、恐怖でさらに顔が青くなっていた。
全身が震え、まるで別人のよう。
「大丈夫?」
そう聞いてしまわずにはいられないくらい。
「ああ、まだなんとか」
口では冷静を保っていても、明らかに無理をしているように見えた。
本当に大丈夫なのか心配になったけれど、本人が決めたことを私がどうこう言う権利もない。
それに、自分の意見が一番大事なのだと教えてくれたのは、逢坂くん自身なのだから。