その日はまるで宴の席だった。


元々酒を飲まない流夜と在義、夜々子は妊婦なので酒類はなし。


ダイニングテーブルいっぱいに料理皿が載っている。
 

今だけは、五人家族。


流夜が初めて体験する、『家族の時間』だった。
 

食事を終えると、咲桜と夜々子、箏子はソファの方で話していた。


咲桜の淹れた紅茶とともに。


ダイニングテーブルにいる流夜と在義のところには、咲桜がコーヒーを置いて行った。


ずっと楽しそうな咲桜と夜々子、しかつめらしい顔でその隣にいる箏子を見て、在義が呟いた。


「……咲桜、夜々ちゃんの方ばかりいるけど、流夜くんはいいの?」


「え? まあ、咲桜の女好きは知ってますし、朝間先生への慕い方も半端ないですから。今更気にしても仕方ないと言うか」


「達観してるねぇ……え、女好き?」


「ん? はい。咲桜、男より女が好きじゃないですか。俺は例外らしいですが」


「…………えええええ⁉ 何それ! 咲桜ってそういうのだったの⁉」


「あ、ご存知なかったですか?」


「ご存じないよ! まさか咲桜がレズの子だったなんて……」
 

おい咲桜。


あの在義に隠し通していたなんて、お前ナニモノだよ。


そしてやっぱり生まれる誤解。