「失礼致しました。撤回致します。在義さんと朝間先生が待っていらっしゃるので、一緒に華取の家に来ていただけないでしょうか。咲桜が張り切って、たくさん夕飯を用意してくれたので」
「……そういうことなら、呼ばれないわけには参りませんね。行きましょう」
うん、いちいち面倒くさいお人だ。
咲桜が手を差し出すと、箏子は当たり前のようにそれを取って立ち上がった。
手を繋いだまま、二人は道場を出て行く。
……こちらも大分仲がよろしいようだな。
「…………」
どうしよう。
本気で咲桜が、夜々子や箏子から離れたくなくなって、やっぱり結婚するのはもう少し先で! とか言い出したら。
まあ、待つけど。いつまでだって。
仲の良い家族そのものの咲桜と箏子の背を見て、流夜は少し嬉しい気持ちになる。
咲桜にはあれこれ言ったけど、やっぱり、咲桜が幸せそうにしているのが、自分の一番の幸せなんだ。
だからこれからも、その微笑みが絶えぬように――俺が、傍にいるんだ。