「え?でも星渚さんや藍が碧音君もアメリカに行く風な口ぶりで」


「あれは明日歌ちゃんをあおるためだよ~」


へらり、笑ったのは星渚さん。


「ごめんね明日歌ちゃん。でも、最終的に行くって勇気を出したのは明日歌ちゃんだよ。頑張ったな」


「じゃあ……、碧音君、日本にいるの?」


「いる。midnightを続けたいし親孝行もしたいっていうのもあるけど1番は」


碧音君は、それはそれは綺麗に微笑んで。


「明日歌のことが。好きだから」


じわりじわり、碧音君の言葉が体に染み込んでいく。碧音君の口から、好きだって。


その言葉が碧音君の口から聞ける日が来るとは、夢にも思わなかったよ。


「好きな人を、放っておけるわけないだろ」


碧音君の手でそっと頬が包まれる。心臓がはち切れそう。だって、こんなにも碧音君が近くにいるんだもん。


「で、でも、碧音君は香澄さんのことが好きなんじゃ」


「勿論今でも香澄は大切な存在だと思ってる。でもそれは、恋愛の意味じゃなくて、家族に対して抱くのと同じような気持ちだったって、気づいた」


「本当に?私のこと、恋愛の意味で好き?」


「うん。なら、もう一度する?」


不敵に笑った碧音君の顔が近づいてきて――もう一度、唇と唇が、触れあった。


実際は数秒程度だったんだろうけど、私にはとても長いものに感じられた。


ゆっくりと柔らかい唇が離れていく。そのときの碧音君の妖艶さ、気絶する。なんて色気なんだ。