出入り口は何か所かあるし人数が多い、早く見つけなきゃと目を凝らして探す。―――と。
「いた!」
香澄さん達を発見して駆け出す。
「っ碧音君!!」
人目を気にせず、思い切り名前を呼んだ。
「碧音君!」
息も切れ切れなまま、碧音君に近づく。香澄さんも皐月も星渚さんもびっくりしたように私を見ていて。
「行かないで!」
「……明日歌」
「私、わがままだって分かってるけど。何度もこの気持ち消そうとしたけど。やっぱり私は碧音君に行かないで欲しい!」
―――私の答えは、これだ。
「もっと碧音君の歌を聴いていたい、一番傍で聴かせてほしい」
どんどん大きくなって溢れる好きの気持ちは、どうしたって抑えきれなくて。それに比例して涙もあふれてくる。
「一緒に笑い合いたい、一緒にまだまだたくさん、いろんなことを経験したい。碧音君の隣に、いたいの」
ありったけの想いを。
「明日歌」
「碧音君のことが—――」
瞬間、目の前には綺麗な顔があって。柔らかいそれで、自分の唇が塞がれていた。
「好きだよ。明日歌」
「…………、っ……あ、お」
今、今。大混乱中の私をよそに、碧音君はそっと顔を離す。
「それに。俺、アメリカには行かないよ。今日は香澄の見送りで来ただけ」
「…………」
「…………」