待ってこの状況は……!と菜流の服を掴もうとして、空振りに終わる。星渚さんに会えたことで、ほくほくした笑顔で帰っていってしまった。


「……今回は、碧音の代わりで練習に参加してたの」


「そう、だったんですか」


「碧音、今悩んでることがあるみたいで。きっとそのせいで来なかったんだわ」


目を伏せて、悩まし気な表情をする。


「悩みって」


「明日歌、もしかして聞いてないの?」


芝居がかった言い方、声色。


「何のことでしょうか」


喉がカラカラで、声が掠れる。


「――碧音が、私と一緒にアメリカに行くって話」


…………何を言われたのか、分からなかった。いや、分かりたくなかった。何それ、え、アメリカ?驚きで言葉も出ない。


「私と一緒にアメリカで修行して、大きな舞台に立ちましょうって誘ったのよ」


「そ、そんなっ」


「私が日本に帰ってきたのだって、このためだもの。……でも」