「はは、うん。俺の父親が今は運営してる」


「そっかー。前のオーナー優しいから好きだったのに」


あなたがいなくなってからもずっと変わらないものもあるけど、そうじゃないこともあるんですよ。


「話を戻そうか。俺らと片瀬はお互いいいライバルでもあったし、バンドのことを抜きにして純粋に仲間としてたくさんと時間を一緒に過ごした」


「特に碧音とは一緒にいたわね」


香澄さんが笑いかけると、碧音君も『うん』と頷いて、あの、警戒心も何もない無垢な笑みをみせた。


前に夏の野外ライブのアンコールで碧音君が歌った曲の歌詞。今、確信した。あれは香澄さんのことを想って書かれたものだったんだ。点だったものが繋がっていく。


「皆といる時間はすごく充実して楽しかった。……でも」


「でも、香澄さんは1年とちょっと前、夏の終わりくらいにいなくなったんすよね」


「私、ギターを始めた頃からプロのギタリストになることが夢だったの。それを叶えるために、アメリカに行くって決意した。そしてLIGHTも辞めたわ」


ある日香澄さんに呼び出され『今日でLIGHTを辞める』と告げられた時は、ショックだった。


けど、香澄さんがやることはいつも正しいからその決断も絶対間違いはなくて香澄さんが夢に近づく一歩になると信じて、背中を押した。