「碧音、分かってる。分かってるから」


ゆっくり背中に手をあてた。


碧音にとって、無理矢理引っ張り出されたくなかった記憶。それを急に、しかも他人にこじ開けられた。


「大丈夫だって」


碧音の力が少しだけ、緩まった。


その手にふと視線を滑らせると、手の平の横や手の甲の関節の部分が赤く擦れている。


小屋のドアを叩き続けたせいでこうなったのか。声が出ない代わりに助けに来てくれ、気づいてと願いながら叩いていたんだ。


こんなに傷を作るまで。


痛かったよな。


「刹那、疲れたでしょ。少し寝てな」


「…………ん」


星渚に言われると、数分も経たない内に規則的に肩を上下させ眠った。