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「刹那」
星渚はバックミラー越しに碧音を見て、安堵したように肩の力を抜いた。さっきよりは大分落ち着いたからだ。
「皐月、俺………」
「いいって。気にすんな」
「財布、届けに行こうとしたら急に後ろから口塞がれて」
「碧音、話さなくていいから」
「首も腕も拘束されて、そしたらっ」
「分かってる」
「暗くて、何も見えなかった。叫びたくても、声が、出なかった」
碧音の脳内ではその記憶が嫌という程鮮明に再生されてるに違いない。
「刹那、言わなくていいよ」
「碧音」
「…………逃げなきゃって」