「だーから」
花火を下ろして碧音君が振り返り――。
「………っ」
呼吸が、止まった。
油断すれば唇と唇が触れあってしまう、距離。かさつきのない唇、長い睫毛、夜の紺色が映った瞳。どれをとっても美少年の顔のパーツ。
その1つ1つから、色香が漂う。
こんな近くだと、碧音君の呼吸音まで聞こえてきそう。空に散りばめられた無数の宝石よりも、私には碧音君の方が魅力的で。
「……ご、めん」
「あっ、えと、ううん私こそ」
碧音君の声にハッとして慌てて顔を離す。
ドッ、ドッ、ドッ。煩い心臓、おさまれおさまるんだ。
「せ、星座の話また聞かせて」
「お前がちゃんと星を見つけられたら」
ああ、今が夜で本当に良かった。私の顔は真っ赤に違いないから。頬が熱い、指の先から足の先まで熱い。
胸がキュンとしたどころじゃない、もっとグサリと心臓に何かを突き刺されたような衝撃が、体を駆け巡った。
私、こんなの今まで体験したことない、ないよ。