「どの花も、きれいだね。」
  君は僕に、笑みを見せながらそう言った。
  でも僕は、君が涙に耐えているように思えた。なぜならそれは、瞳の奥で、「涙」という水が、恥ずかしそうに隠れているから。だから、僕は「そうだね」とは答えず、
  「なんで?」
  と返した。ふつうは「花が好きだから!」と自分の好みを理由にするか、「だって、花はきれい。当たり前じゃん!」と怒りっぽい口調で返すが、君は違った。
  「「この中で俺が一番だ!」なんてさ、私たちが普通にやっている1位2位の争いが起こらずに、この花壇たちの上に、誇らしげに、しゃんと胸を張って花を買う人を待っているんだよ?花たちにも、ちゃんとした感情があるんだな~って思うと、なんだか心が洗われる気がしない?」
  正直言って、このように帰ってくるとは、思わなかった。
  花にも感情がある。
  花も人間と同じように、笑い、泣き、怒る。たった一つだけ違うとすれば、花の言う言葉は、人間には直接伝わることができない、ということだけなのだ。