彼女は雅臣のあまりの驚きぶりにとても楽しげに甘く笑った。

「あははっ、ゴメンね?すごく驚かせちゃったみたいで」

「なら、普通に声かけて下さいよ、読まなくたっていいでしょうに」

顔を赤くしながら照れるように言い放った

「だって、あんまりにも素敵だったからついね」

今度はいたずらっぽい笑顔でそう答えた

(あぁ、この人は色々な笑顔を持っている人なんだな)

「ん?どーしたの?急にボーってしちゃって」

月代はキョトンとした顔で雅臣の顔をそっとのぞき込む。
その仕草に慌てて彼は少し距離をとった。

「べっ、別になんでもないさ!!」

真っ赤な顔で否定してみたがやはり月代は
きらきらとした笑顔で笑うのであった。

「あ、あの、これ朝から借りてたえんぴつなのですが……芯を折ってごめん…」

雅臣はふと、我に返り折れたえんぴつの先端を見ながら申し訳なさそうに言う。

「今すぐ削って返すからっ」

そういうと筆箱を漁るが削る道具は出てこなかった。

(……田原に渡しっぱなしだった)

その事に気づいたが時既に遅し

……見れない、月代の方を

それは申し訳なさもあったが

何より不甲斐なかったからだ……。



「大丈夫だよ」

俯く雅臣にそっとささやくように、しかしそれでいてハッキリと聞こえる声で

まるで、子供でもあやすかのような優しさを含む口調で続けた

「返すのはいつでもいいの、だからそんな顔をしちゃダメだよ」

そうつげると彼ににこりと微笑みかけた。

雅臣はなにか言おうとした、しかしそれは言葉にならず彼の心にうっすらと溜まっては断念するの繰り返しをした。

「それじゃ、もう帰るね。ばいばい雅臣君」

彼女はいつもの柔らかな笑みを携えそういうと踵を返そうとした。

「待ってくれっ」

慌てて呼び止めた

次会うときにちゃんと返すから


待ってるからね









その最初で最後の会話後

翌日から彼女は学校に来なくなった