「じゃあ桜はさ、好きな人いるの?」

「え…?」

突然、友達の柚子に聞かれて思わず間抜けた声がでる。
どういう話の流れだったのかは思い出せないが、ぱっと幼馴染の顔が思い浮かんだ。

阪口裕也。
別に特に凄いところなんかはない。
勉強は中の下、運動は下の下。
いつもほわほわしてて、何処か放っておけない。
幼稚園の頃からずっと一緒で、なんだってあいつのことは知っているつもり。
超強烈な腐れ縁があるのか、クラスも被ることが多く、高校一年に上がって隣のクラスと気付いた日には、流石に運命を感じた。

「…いない、かな。」

頭に浮かんだ奴のことをブンブンと脳内で掻き消す。
冗談じゃない。
私のタイプは男の中の漢、ゴツい系である。
あんなニコニコ、弱そうだもん!

「そうなんだぁ、意外!
桜、絶対阪口くんのこと好きだと思ってたよ。
そっかぁ…好きじゃないんだ…。」

私が阪口の存在を無視すると、今度は柚子が阪口の名をだした。
妙に口元が緩む柚子。
なんなんだこれは。

「実は私、ちょっと気になってたんだよね。」

柚子は少し躊躇った後、頬をそっと赤らめて、そう言った。
その瞬間、胸にチクリとした痛みが走った。

柚子はクッソ可愛い。
見てて癒されるとクラスの奴が噂してたほどにだ。
そんな子が阪口を好きだなんて…

「勿体無い…‼︎」

「え、あー…はは。」

いや、別に柚子が誰を好きだって私は応援しますけど、しますけどね⁈

「が、頑張れ…?」

「もっちろん。」

微笑んだ柚子が不思議と可愛くて、なんで阪口なのかを更に問い詰めたくなる。
でも…
恋してるからなのかはしらないが、柚子の微笑みはなんだか眩しかった。