「リトは元気だよ。学級の仕事も頑張ってるみたいだし、ちゃんと学校通ってるし」
あ、奈央って聞いてるのにリトで返すのは失敗したか。まあ俺にとって奈央はリトと同一人物だから仕方あるまい。彼女だってそのことを知っているのだから、気にして欲しくはない。
「良かった。」
「初くんたちが良ければまた5人で遊ばない?時間を取って夏休みとかに」
…は?
 思わず声が漏れた。俺が気にしすぎているだけかもしれない。しかし、ただ素直にふざけるなと思った。善悪区別のつかない意思のない人間のくせに。しかし、いざこざを起こしてしまうのは非常に面倒だ。
「リトやヒロに話してみて、よければね」
「ありがとう」
既読をし、トーク画面を閉じ携帯を放り投げた。胸に残る不快感と変な期待が交差する。悲しいわけでもうれしいわけでもなかった。
 しばらくすると兄が帰宅した。汗くさい青春じみたジャージを洗濯機に投げ捨て、何を思ったのか俺の部屋にやってきた。
「ただいま」
「…おかえり」
眠りかけていた目をこすりつつ返事をした。汗くさく疲労が見える兄を確認する。兄は少しだけ悲しい表情をしていた。
「初、あのさ」
「何」
「俺の3年間ってなんだったんだろうってつらくなった」
「もう総体連終わったの?」
「違うけど」
口元をゆがませ、頭を掻く。
「結局親とかにも応援されなかったわけだし、部活での成績もいいわけではないし、来年には就職してるしなぁって虚しくなっただけ」
「まあ、ね。うちの親だし」