玄関のドアに手をかけ体を半分だしながら声をあげた。





「いってらっしゃい」



「………え」






一瞬、言っている言葉が耳から耳へとすり抜けていった。



“イッテラッシャイ”



それが出かける人への挨拶だということを悟るのに2秒はかかった。




「い、いってきます」


「うん」




この言葉を言われたのは、一体何年ぶりだろうか。