リリアside

王子が話してくれた過去はまるで他人の物語を聞いているような感覚だった


話をしている時の王子の表情は昔の思い出を懐かしく回想する穏やかな表情…
そんなんじゃなくてまるで思い出のその女の子に恋する表情…そしてその顔を私にも向ける

多分…きっと私とその女の子を重ね合わせてる




「レイシア王子」

私はまだちゃんと現実を知らない
自分のことを何も知らない


「ん?」

「少し時間をください
私を思い出す時間をください
必ずまた貴方に会いに行きます」


過去を思い出したら何か変わる気がする
それに…思い出したいっ
両親のこと、それから国のこと




王子はしばらく私をじっと見ていた

「分かった。
信じるよ、君のこと
でも必ず俺のところに来ること
また10年もかけて探すのはきついからな」


さっきまでの整った、端正で少し厳しそうに見える顔が、今はまるですべてを理解して受け止めてくれるような、そんな優しい顔で笑ってくれた


「はい」


そう約束して私たちはまた別々の道を進む