「それでその女の子とはそれっきりなんですか?」


「…ああ」


“それっきり”
あの子の面影がとても残っている彼女に呆気なくそう言われて、記憶がないのは分かっているけどなんだか悲しくなった


最後に会ったのはもう10年も前
一緒にいた時間よりも長く、遠い月日の美しい思い出…

なんかじゃない


あの子と初めて会った日、俺が恥ずかしがるのを見て自分から話しかけてくれたこと
城の庭で駆け回って眠ったこと
廊下でふざけてたら怒られたこと
初めて一緒に食事したこと
一日中本を読み続けたこと
誕生日にプレゼントを貰って、おめでとう、と言ってくれたこと
プレゼントを渡したら少し恥ずかしそうにはにかみながら、ありがとう、と言っていたこと

こっそり2人で城を抜け出して一面花畑が広がる野原で手を繋ぎながら、いつか絶対結婚しようね、って笑い合ったこと



全部全部ただの思い出だけには出来なかった


いつからだろうか、こんな風に思うようになったのは…
いつからだろうか、こんなに…
恋焦がれるようになったのは



ただもう一度会いたい…




あの子の影を追い求める頃にはもうそんな思いが溢れていた