「はぁ・・・助かったよ綾音ちゃん」
私は歩きながら聡さんの方を見る。
聡さんは、あんな風に周りを取り囲まれるのは好きではない。という。
そりゃあ、誰でもそうだろうけど。
「女の人に言い寄られるのは苦手なんだ。断ると悲しい顔をさせてしまうからね。」
と、苦笑をもらす聡さん。
聡さんは、あっ!と言ってこちらを向き直す
「綾音ちゃん、迎えに来ちゃったけど迷惑だったかな!?」
迷惑ならやめるから!と付け足して言った。
「迷惑ではないんですけど・・・逆に迷惑かなって。毎回取り囲まれちゃいますよ?」
と、少し笑いながら言う。
すると、聡さんはそれは困ったね、と言って笑った。
そして、少しの間沈黙があった。その沈黙を破ったのは聡さんだった。
「夜ご飯・・・どうしよっか?」
「夜ご飯・・・聡さんはなにか食べたいものありますか?何か作ってみようって思うんです。」
私は真希ちゃんと相談した内容をさっそく口にした。
聡さんは、うーん・・・と悩むと、ぱっと顔を輝かせた。
「唐揚げが食べたいな!あぁでも、野菜も必要だよね?うーん。」
とまた悩んでしまう。
「わかりました、唐揚げですね!お野菜は私が考えますから!」
そう?と言って傾げる聡さん。
そして、じゃあと言って手を出してくれる。
「はぐれないように、手握ってて?」
私はこの前のように子供扱いしないでください!とは言わなかった。
素直に聡さんの手を握る聡さんもぎゅっと握り返してくれた。
そのことが嬉しかった。
傍から見たら親子でも私からしたら大きな一歩なのだ。
私はスーパーに着くまで心臓がバクバクだったのは言うまでもない